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【八潮市道路陥没】再発防止へ、有識者委初会合 家田委員長「今できること、全力で取り組む」

2025/02/21

 埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没の再発防止に向け、国土交通省は21日、下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会の初会合を、省内会議室で開いた。

 委員長についた家田仁政策研究大学院大学特別教授は、インフラメンテナンスのあり方を早期に取りまとめる必要性に言及するとともに、その思いを述べた。

 【委員長あいさつ全文】

 (八潮市で発生した道路陥没事故について)120万人という人数は一つの大都市。これが非常に長期にわたって影響を受けているというのは、自然災害でいえば激甚災害に相当するような重大な事態であると私は認識している。現時点では、この事故の発生メカニズムはまだ未解明だが、しかしながら、こういう事態が再び起こることのないように今できることを、全力を挙げて取り組むというのは使命。

 (取りまとめに向けて)早ければそれにこしたことはない。緊急の政策を考えることはもとより、それに加えて中長期的にはインフラのあり方、あるいはインフラマネジメントのあり方がどのように転換を要するのか、その辺もじっくりと委員の皆さんにご検討いただきたい。

 この事故の影響は極めて長期にわたっている。例えば道路や鉄道で何かトラブルが発生した時は、交通を迂回してもらって、そして通行止めにして、迅速に復旧する工事をする、なんてこともできる。東日本大震災で高速道路が止まった際、極めて迅速に復旧したことは世界中の人が注目した。

 しかしながら、下水道というのは上流から水が流れてくる。しかもそれは簡単に止めることができない、ほとんど止めることができない。しかも迂回路を持っていない。そこが非常に辛いところ。こうしたところは川にもあるが、川の場合は洪水で溢れたとしても、数日経てば水位が下がる、あるいは1年の中には渇水期もあり、下水道に比べればずいぶん違う。

 それに対して下水道は人間が生活して、経済活動している限りは、24時間365日あまり変わらない。ここが今回の事故の非常に大きな特徴と認識しなくてはいけない。顧みて見ると、(日本の下水道普及率は)人口の大体8割以上となっている。浄化槽なども含めると、90%以上の国民が極めて衛生的な生活をできるようになっている。

 これは下水道をはじめとする、ここまで戦後から一生懸命やってきた〝下水道系〟インフラ投資のおかげであるが、戦後の短い期間から、急いで作ってきたから、決して代替路だとか、リダンダンシーだとかを考える余裕は全くなかった。ここが今回の(事故の)辛いところである。

 また、地上に設けられている橋梁のような施設は、外から見ることが比較的容易だが、地下に設けられている構造物は非常に難しい。鉄道や道路、トンネルのように人が中に入り点検が割合容易にできるものはさることながら、今回の下水道のように人が入って調べることが非常に難しい、――もちろんロボットも駆使しているが、そういうインフラはやはりハンディを抱えており、また同時にその構造物の状況が内側からわかったとしても、その構造物の周辺にある地盤の状況は一体どうなっているのかというのは不確定要素が極めて大きい。

 そういう意味で今回の事故は、何重もの意味で真剣に捉えなければいけない事態ではないか。

 2012年に笹子トンネル事故が起こり、当時、私は社会資本メンテナンス戦略小委員会でお手伝いさせていただいた。その中でいろいろな政策を打ち出し、そのことごとくを当時の太田昭宏大臣がインフラメンテナンス元年を打ち出し、大いに政治的モメンタムを発揮いただいてほとんどが実施できた。その成果は相応なものがあると思うが、まだまだインフラマネジメントの状態は決して万全からは程遠いのが実情。

 これから相当にじっくり考えていかなければならない。中野大臣の先ほどの力強いご決意を伺い、私ども委員も身が引き締まる思いであると同時に、これは本気になって、国土交通省のみならず、インフラメンテナンスあるいはマネジメントに関係するような省庁を挙げて努力が進んでいくものと大いに期待するところ。

 最後になるが、今日おいでになったマスコミの方にぜひお願いしたい。これは決して官庁だけがやるような仕事ではなく、民間企業も、また国民も全力で支援しない限り、いい状態にはいかない。ぜひマスコミの方々もご支援をいただきたいと私は切に思う。


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