人口減少下の水がテーマ InterAqua、セミナーで識者議論 マイクリップに追加
第16回水ソリューション総合展「InterAqua 2025」が1月29~31日の3日間、東京・江東区の東京ビッグサイトで開催され、会期中、合計で約4万2000人が来場した。29日には会場内のAqua Stageで「人口減少時代を生きる―地域課題に水の観点から挑戦」と題するセミナーが開催され、いち早く人口減少の波を被る地方部において、持続可能な社会のためにチャレンジを続ける各者が事例を紹介し、それに対し意見を交わしあった。
セミナーは、第1部の「水は地域の社会課題」と第2部の「水は水だけではない」の2部構成で開催。1部・2部ともに大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫教授がコメンテーター、日本水道新聞の武田教秀編集長がモデレーターを務めた。
第1部のスピーカーは、ウォーターポイント経営企画室の小早川竜也氏と日本水フォーラムの桑原清子チーフ・マネージャーの2氏。
コメンテーターの村上氏は、東京財団研究所が多くの人が恩恵を受ける水システムを「水のみんなの社会共通基盤『水みんフラ』」と提唱しており、その中で研究主幹として携わった「集約型と分散型の上下水道システム」に関して言及。人口減少下、分散型の上下水道システムの位置付けが増すと思われることを踏まえ、こうした選択肢を「みんフラ」として示し、利用者間で熟議する必要があるとした。
小早川氏は、ウォーターポイント社のこれまでの「水の自販機事業」「宅配水事業」「プラント設備事業」での知識と経験を生かし、地下水を用い、生活用水と飲用水を分けて管理することで維持管理コストを抑制した新たな地域分散的水インフラを提供する取組みを進めていることを紹介した。
桑原氏は、日本水フォーラムが発展途上国のNPO・NGO団体と協働して水問題解決に努める「草の根活動の支援」の取組みを紹介。水問題の解決は、生態系や農業、公害など環境・経済・社会のあらゆるところに貢献していることを強調した。
第2部のスピーカーは、肥後の水とみどりの愛護基金の大野芳範専務理事とNJSの西澤政彦執行役員管理本部事業戦略室長の2氏。
大野氏は、肥後銀行第8代頭取の長野吉彰氏の水域汚染による公害や大水害、大渇水といった水に関する実体験に基づき、同行グループ等が出捐して同基金を設立したと成り立ちを紹介。現在、熊本の地下水保全に取り組む企業・個人・団体の顕彰、地下水保全の重要性の啓発活動、購入・保有と維持管理による水源林保全、棚田の再生と稲作による地下水涵養など、多様多彩な活動に取り組んでいるという。
西澤氏は、NJSのまちづくりソリューションの取組みを紹介。水インフラの維持発展には地域の活力創出が欠かせないとの観点から、同社はこれまでの官民連携のノウハウをもとに、地域の住民や企業と協働して地域創生を支援している。特に、各地域の「まち」「ひと」の魅力を発信する地域ライターを育成することを目的としたコラムのコンテストの取組み「まちおしAWARD」が脚光を浴びているという。
最後に村上氏が、今後の水の課題解決に求められる理念として、「水を楽しめる社会」「水で頑張る人が報われる社会」「日本の水の良さを誇れる社会」の三つを挙げ、「皆さんとともに今後、こうした社会づくりに努めていきたいと強く思った」とセミナーを締めくくった。