国交省、流域下水道の緊急点検要請 全国で一斉に、独自での着手も マイクリップに追加
埼玉県八潮市内での陥没を受け、国土交通省は1月29日、全国の下水道管理者に対して今回の陥没事故と同様な箇所の緊急点検を要請した。
対象となるのは流域下水道管理者が管理し、晴天時の日最大処理量が30万㎥以上の下水処理場に接続する口径2000mm以上の下水道管路。腐食などの施設の異状により道路陥没の恐れがないか、目視等による緊急点検を行うこと、異状が確認された場合は道路管理者と連携の上で、補修など適切な措置を検討することを求めた。
対象施設については、異状の有無、有の場合は異状と措置の内容、完了予定時期を記載する。国交省では2月7日までの提出を求めている。
通知で示された対象となる管路施設は次の通り。( )内は対象管路延長。
【埼玉県】荒川水循環センター(約41km)▽新河岸川水循環センター(約44km)▽中川水循環センター(約62km)【千葉県】花見川終末処理場(約33km)▽江戸川第二終末処理場(約41km)【東京都】清瀬水再生センター(約19km)【神奈川県】相模川流域下水道右岸処理場/相模川流域下水道左岸処理場(約58km)【大阪府】鴻池水みらいセンター/川俣水みらいセンター(約109km)▽原田処理場(約5km)【兵庫県】武庫川下流浄化センター(約18km)▽原田処理場(約13km)【奈良県】浄化センター(約15km)
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国交省からの要請を受け、報告対象となった流域下水道での緊急点検が全国で一斉に始まった。
埼玉県では3日から流域下水道の緊急点検を開始。荒川右岸流域下水道での緊急点検では、伊田テクノスの社員が国道254号線沿いに布設された汚水幹線の点検を実施した。現場では、同社社員がマンホール内に潜行、内部の腐食劣化状況を確認した。
千葉県では31日未明より点検を開始し、同日午後にその様子を報道陣に公開した。現場となったのは、江戸川第二終末処理場に接続する松戸市栗山の管路(口径3500mm)。業務は県が千葉県下水道公社に委託し、さらに同公社が一部を「クボタ環境・和合エンジ・ウォーターエージェンシー特定委託業務共同体」に再委託して行われた。
点検では同県のちば野菊の里浄水場の南東の人孔から地中に降り、対象管路に接続している管路から目視による点検を行った。なお、今回の点検では、対象管路に異状は見られなかった。
東京都では4日に、緊急点検の現場を報道陣に公開した。
現場となったのは、清瀬水再生センターに接続する黒目幹線(円形管・公開地点は口径3250mm)。下水道メンテナンス協同組合の会員企業が入孔し、点検を行い、異状がないことを確認した。
大阪府では1月31日から流域下水道管きょの緊急点検を開始し、同日深夜には門真市内の幹線管きょで実施した緊急点検の様子が報道陣に公開された。全国最大規模の流域下水道を有する府では、7日までの調査完了を目標に急ピッチで作業を進めている。
門真市の現場では、国道163号線下に布設された口径2700mmの門真寝屋川幹線(二)(全長約2.7m、ボックスカルバート、昭和41年築造)の調査を実施。点検業務を担当した管清工業の作業員がマンホールから地中に降り、管きょの腐食等の異状の有無や土砂の堆積の有無等について慎重に目視で調査し、異状がないことを確認した。
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流域下水道での緊急点検に加え、独自に緊急点検を実施する自治体も出ている。堺市上下水道局では、市内の下水道施設において1月30日から緊急点検を開始した。同市の下水道施設は国土交通省から緊急点検の要請があった対象施設には含まれていないものの、同様の事故が発生しないよう市独自に実施するもので、2月7日までに調査を完了する予定。
対象施設は口径2000mm以上の管きょ(合流、分流汚水)のうち、経過年数およびこれまでの管内調査結果を踏まえて選定した約2.7km。
点検に当たっては、同市職員がマンホール内部の土砂の堆積や腐食等異状の有無等について目視点検等を行い、同市から下水道管路施設維持管理業務を受託する事業者が一部管路の潜行目視調査等を行う。