日本下水道新聞 電子版

2024年27日 (水) 版 PDF版で読む 別の日付を表示
2024年27日 (水) 版

能登半島地震から1カ月 堂薗洋昭・国土交通省下水道部下水道事業調整官に聞く マイクリップに追加

 最大震度7を記録した令和6年能登半島地震の発生から1カ月が経過した。水道、下水道施設に甚大な被害が発生しており、特に能登地方の本格的な復旧には長期間を要する見通しだ。今回、下水道支援調整隊の第一次隊長として、石川県内で活動した国土交通省下水道部の堂薗洋昭下水道事業調整官に、この1カ月の経過とともに、復旧に向けた展望を聞いた。

上下一体の復旧 現場レベルでも

茶谷義隆七尾市長と面会する堂薗調整官(左)

 国土交通省下水道部では、発災から2日後の1月3日に、本省職員らによる先遣隊を石川県に派遣し、被害状況の情報収集を行いました。その後、石川県からの要請を受け、5日には中部ブロックの自治体(後に政令市等に拡大)や関係団体による支援調整を担う下水道支援調整隊の隊長として、国土技術政策総合研究所、長野県、名古屋市、日本下水道事業団、日本下水道協会、日本下水道管路管理業協会とともに石川県に入りました(後に東京都、日本下水道新技術機構も参加)。

 この2日後には同じく下水道部の岸田秀企画専門官が参加する水道の支援チームが石川県入りし、以後、県庁内の同室で情報を共有しながら支援活動を展開しました。

 支援調整に当たっては、基本方針として「下水の溢水を防ぐ」「水道の復旧に遅れをとらない」等を掲げました。特に水道については、松原誠下水道部長からも、今年4月からの水道行政の移管を見据え「水道、下水道で情報を共有し、連携して取り組むように」という指示もあり、この点は十分に意識しました。

 被災した下水道施設の復旧状況ですが、処理場・ポンプ場については、一部で稼働停止箇所があるもののおおむね応急対応を終えています。管きょについては、一次調査が石川県内の全ての市町で完了し、実施延長約1960kmのうち、約1460kmで被害のないことを確認しました。二次調査の対象延長は、熊本地震時の2.5倍以上となる500km超となっており、過去の地震と比較しても被害の程度が大きい災害であることがわかります。特に、震源に近い奥能登と呼ばれる4市町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)や七尾市などの被害が甚大です。

 ◇

 私は、5~12日の第一次、19~26日の第三次の支援調整隊長として活動しました。当初、汚水溢水の情報や被害報告などをもとに津幡町や羽咋市、内灘町を訪問し、体制の構築と当面の対応方針を示すことを中心に活動しました。また、七尾市では地震で、し尿処理場が被災したため遠方までし尿を運ぶ必要があり避難所の仮設トイレが使えなくなる自体が生じたため、市内の下水処理場を活用することを下水道支援調整隊のJSが中心となって七尾市と調整し、10日から受け入れを開始しました。一方で、第一次の時点では、震源に近い奥能登4市町は人命救助が最優先の状況であったこと、また道路が寸断されているなど交通状況が著しく悪いことなどもあり、なかなか近付くことが難しい状況でした。

 管きょの一次調査については、熊本地震時の対応も参考に、8日に説明会を開催することを目標に、下水道支援調整隊のメンバーである長野県と名古屋市が中心となって、支援自治体の手配や資料の準備などを進めていただきました。寒い中でしたが、被災地のために多くの職員に参集いただきました。改めて感謝いたします。

 また石川県庁内では毎日災害対策本部員会議が開かれ、奥能登4市町、七尾市、志賀町の「能登6市町」の首長もオンラインで参加しました。これまでの災害では、被災地の首長が県庁の災害対策本部の会議に毎日参加することはなかったと思いますが、オンラインツールを活用し、現場のリアルな話が知事や政府現地対策本部長等の集まる場において共有されたことは、これまでの災害対応と異なる点と感じています。情報共有のスピードが早い点で良い反面、市町の中で正しい情報が共有されていないと、誤った認識に基づいた内容が災害対策本部員会議内で共有されてしまうこともあり、首長への丁寧な説明の重要性を再認識しました。

 ◇

 能登6市町の管きょの調査、応急復旧については、水道との連携も意識し、基本的には、市町ごとに、日本水道協会の枠組みで支援に入った大都市と同じ大都市の下水道部局が支援に入るように調整し、上下一体となった復旧支援を行っています。

 例えば、七尾市に入った名古屋市では、名古屋市の水道部局が避難所につながる水道管路を優先的に復旧する場合、その情報を共有し、避難所から処理場までの下水道管も優先して流下機能を確保するといった対応を行うなど、現場レベルでの上下一体による復旧事例が見られました。

 また水道の復旧に遅れないようにするため、今回、国交省ではこれまでの被害調査の考え方を転換し、詳細調査よりも応急復旧を先行させるという方針を示しました。従来、下水道管路の災害復旧では、災害査定を目指し、一次調査で被災箇所の絞り込みを行い、そして二次調査で管きょ内の洗浄とTVカメラによる詳細調査を実施するのが標準的な流れとなっており、私自身も石川県に入った当初はこうした流れを意識していました。

 しかしながら、水道の復旧に遅れないことを目標とした時、管きょ内が閉塞しているならば、滞水箇所の吸引や高圧洗浄を先行して実施し、必要に応じてバイパス管を設置するなど、まずは流下機能を確保することが必要です。能登6市町に支援に入った大都市も、水道に遅れをとらないためにはこうした対応が必要と感じつつも、二次調査の支援の枠を超えて被災市町を支援して良いか、また、現行の支援ルールの枠組みである一次調査、二次調査の流れから逸脱し、吸引、洗浄等を先行、TVカメラ調査を後回しにすることで追加の費用が発生した場合に被災自治体に負担をかけてしまうことになるのではと葛藤されていました。

 そこで国として応急対応を優先するという方針と費用負担に関する考え方を明確にするため事務連絡を発出し、これにより支援に入った大都市も応急復旧を急ぐという体制にシフトしていただきました。上下一体となった復旧を目指す中で、これまでの優先順位の考え方が変わったことは、今後さまざまな指針類の見直しにつながるものと考えています。

 ◇

 石川県内でも比較的被害の少ない市町では今後、災害査定に向けた準備が進む段階に入ります。一方で、能登6市町などではまだ時間がかかるのではないかと考えています。特に、北陸地方は本格的な積雪シーズンに入っています。現場では、真冬の寒い中でベタ雪に苦労しながらも、応援自治体や管路協会員をはじめとする企業・団体など官民一丸で復旧作業を進めていただいており、頭の下がる思いです。国としても引き続き、上下一体となった早期復旧に向けて全力で取り組んでいきます。


この記事を見た人はこんな記事も見ています

総合の過去記事一覧

×
ようこそ、ゲストさん。
新規会員登録 ログイン 日本下水道新聞 電子版について