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経営改善、脱炭素へ前進 下水道機構、電気料金削減手法で技術資料(案) マイクリップに追加

 下水道事業が直面する電力費高騰対策の新たな切り口として、再生エネルギーとNAS電池を代表例とする蓄エネ技術を組み合わせた電力料金削減手法について、日本下水道新技術機構では民間6社と共同研究を実施。その成果を技術資料(案)として取りまとめた。温室効果ガス排出抑制にもつなげつつ、下水道経営の改善に向けた新たなアプローチとなる。

24日まで意見公募

 下水道機構、NJS、東芝インフラシステムズ、日本水工設計、明電舎、メタウォーター、八千代エンジニヤリングの7者が令和3年8月から今年3月にかけて共同研究(下水処理場における電気料金の削減手法に関する共同研究)に取り組んできたもので、近日にも技術資料として発刊される見通し。

 昨今、コロナ禍の景気停滞からの脱却を背景にエネルギー需要が世界的に高まる一方で、ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁によりエネルギー供給の縮小が引き起こされ、原油や天然ガス価格が高騰。国内電力会社は軒並み電力料金を引き上げた。今後も各電力会社で値上げが予定される中、大口の電力需要家である下水道事業、中でも下水処理場を運営管理する自治体にとっては動力費(電気料金)高騰の煽りを受けており、下水道事業経営逼迫の要因となっている。

 下水道機構ではこれまでも省エネ設備導入に関する共同研究や、省エネ診断といったアプローチにより下水道経営の改善を支援してきた。

 今回の共同研究では、創エネルギー技術と蓄電池技術を組み合わせた電気料金削減手法を整理するとともに、下水処理場3カ所を対象にケーススタディを実施。電気料金の削減効果や温室効果ガスの削減効果について調査研究を行っていた。

 電気料金の削減手法としては、「電気料金プランの見直し」「下水処理場での工夫による電気料金削減方法」「再生可能エネルギーの活用」について解説。基本用語や電力料金プランなどの基礎から施設整備に活用できる補助金制度、今後の電力市場動向、さらには実際の再生エネ・蓄エネ技術導入事例などの知見についても押さえた構成となっているほか、具体的に導入に当たっての手法も整理している。ケーススタディでは、日量約1万、2.4万、22万㎥の規模別に、削減電力費等の算定結果や費用対効果について例示している。

 創エネ・再生エネ技術については徐々に実装が進む一方で、創エネや再生エネの生産・消費ギャップを埋める「蓄エネ」に着目したのがポイントで、技術資料では蓄電池システムが再生エネ活用において注目されるに至った背景から、研究開発中のものを含めた蓄電池システムの種類、長所・短所や付帯する設備構成の解説等についても網羅している。

 同機構ウェブサイトにて今回の共同研究成果を技術資料(案)として公表しており、24日までパブリックコメントを受け付けている。問い合わせ先は、下水道機構資源循環研究部まで。


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