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2022年914日 (水) 版

水道行政移管、予算措置に懸念の声 自民党下水道議連、関係団体から意見聴取 マイクリップに追加

 国土交通省に大部分を移管し、水管理・国土保全局内で下水道行政と一体で所掌することが有力視されている水道行政が、7日に相次いで開かれた自由民主党の下水道事業促進議員連盟(額賀福志郎会長)、水道事業促進議員連盟(田村憲久会長)の総会で議題になった。下水道議連の総会に出席した日本下水道協会ら官民の関係団体の代表からは、国において一体的な運営が図られることを好意的に捉える一方で、下水道・水道それぞれの予算がしっかりと確保されるよう要望もあった。

 下水道議連の総会には、国交省側から古川康大臣政務官に加え、岡村次郎水管理・国土保全局長、松原誠下水道部長が出席した。古川政務官は「国交省が有するインフラ管理のノウハウ、技術力に対して大きな期待が寄せられている」としつつ「『国交省に移って良かった』と思っていただけるようしっかりと取り組む」と意気込んだ。

 また下水協の岡久宏史理事長、全国上下水道コンサルタント協会の間山一典会長、日本下水道施設業協会の木股昌俊会長が、水道行政移管について所見を述べた。

 岡久理事長は「整備・管理行政を国交省が一元的に対応することで、効率的な行政運営が図られることを期待している」と述べつつ、「下水道は公共事業の色合いが強い。水道とは事業の性格が根本的に異なることを十分にご認識いだきたい」と指摘した。さらに国交省で一元的に所掌することのメリットとして災害対応の迅速化、国際展開の促進を挙げ、移管に対して好意的な姿勢を示しつつ「下水道事業の予算が減らされることにならないようにお願いしたい」と注文も付けた。

 間山会長は「団体名もだが、会員企業も上下水道の両方担っていることがほとんどだ。担い手不足の時代になり、既存ストックを有効活用の仕組みや事業を生み出していければ。一元化した際には、下水道、水道の共同事業が円滑に進む、災害対応が機動的に進むなど担い手不足だからこその一元化の方策を考えていきたい」と歓迎した。

 木股会長は「(上下水道とも)事業を安定的に継続するための多くの共通の課題を抱えている。新体制となっても、社会資本の整備の一翼を担う一員として、ご期待に応えられるよう、準備を進めていきたい」と述べつつ、「新製品・新技術を紹介する展示会を通じた技術交流、課題解決の場として、下水道展、水道展ともに活発化し、発展的な展示会にしていかなくてはならない」と応じた。

 出席議員からは、国交省内で一元的に所掌することに好意的な意見が寄せられた一方で、下水道関係予算について概算要求で示されているシーリング(上限)が、水道関係予算も含めた形で設定されることで、当初予算額が減額となる危機感から「当初予算を移管してシーリングにとらわれず予算を増やすべき」とする意見も出された。

 なお下水道議連総会の閉会直後に開かれた水道議連総会には、厚生労働省水道課、総務省自治財政局とともに、国交省下水道部の松原部長も引き続いて出席した。

 下水道議連、水道議連の総会後、額賀会長らは本紙の取材に対し、水道行政の移管についての所感を語った。

 ■額賀下水道議連会長

 上下水道は国民生活や地域経済に直結している。片方だけを重視していくものではなく、連携していくもの。一元化して行政を進めていくことは非常に大事。災害が起これば、国がコントロールする体制をつくることが、国民の生命・財産を守ること、生活を守ることにつながると考えている。

 ■田村下水道議連幹事長(水道議連会長)

 ステークホルダーの意見をしっかり聞き、心配のないようにしていかないといけない。環境省と国交省の連携をしっかりしてもらうことも重要だ。現場の話をよく聞き、WinーWinで動くようにしていくことが大事だ。下水道議連とも連携し、しっかりやりたい。

 ■盛山正仁下水道議連事務局長(水道議連幹事長)

 関係者の皆さんにとってはウェルカムではないかと思っている。地方公共団体では、上下水道を一体で扱うことが普通となっている。頭(所管省庁)が違うというのはなかなか面倒であり、一緒にしてほしいという声もあった。個々の事業者には飲み込まれる心配があるのもわかるが、全体としてはこの方向でお願いしたい。

 ■務台俊介水道議連事務局長

 良いことだが、課題もある。環境省で衛生工学を専攻して入庁した職員のキャリアパスをどう考えるかも一つの問題かと思う。自治体レベルでは上下水道を一緒にやっているから問題はないという議論もあるが、経営面の課題もある。水道が省庁をまたぐ行政となる中で、弊害が生じないように、議連としても見続けていく必要がある。


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