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新経営戦略を策定 大阪市、CWOと長期契約締結 マイクリップに追加

老朽施設改築に集中投資

 大阪市建設局は3月末、「大阪市下水道事業経営戦略」(計画期間=令和3~12年度)を策定・公表した。「未来への責務を果たす下水道」の基本方針の下、機能維持・浸水対策・地震対策・都市環境保全の四つの施策を、経営健全化の視点を持ちながら着実に実施する。

 経営戦略では、大阪市の下水道が抱える課題である▽急増する老朽施設▽集中豪雨への対応▽地震・津波への対応▽都市環境への対応――として機能維持・浸水対策・地震対策・都市環境保全を掲げ、この4施策に計画期間中で約4700億円を投資していく。

 特に、急増する老朽施設等の機能維持には約3890億円を投じ、10年間で約450kmの管きょ改築や機械・電気設備約1670装置の改築を行う。また、PPP/PFI手法を用いて、海老江下水処理場改築更新事業を継続実施するとともに、新たに舞洲スラッジセンターと平野下水処理場に設置している汚泥処理施設の改築と維持管理・運営業務を令和4年度から着手予定。同事業の実施方針(案)は3月に公表されている。

 浸水対策(約380億円)では、計画降雨時間60mmに対する浸水安全度100%の達成を目標とし、浸水被害地区の軽減対策等を実施する。「浸水安全度」は市独自の指標で、下水道による大規模な雨水対策施設だけでなく、河川・公園など他事業による雨水流出抑制施設等も含めた総合的な評価指標。時間60mmの計画降雨が降った際のまちの浸水に対する安全性について、より実態に近く、かつ市民にとって理解しやすいものとしている。

 これらを実施するための投資・財政計画では、計画期間中は汚水処理経費を使用料収入で賄うことができる見通し。ただ、9年度からは経常損益の悪化傾向が続き、将来的には赤字となる見込み。

 2年度は使用料の減免措置の影響等により収入が大きく落ち込み、今後も見通しが不透明であることから、本来の投資・財政計画とは別にコロナの影響を考慮した収支見通しも「中長期の経済財政に関する試算」(内閣府)を反映して作成。これによると、コロナの影響で下水道事業会計は一時的に赤字となるが、5年度末には赤字を解消する見込みであるなど、影響は一時的なものであるとの認識を示している。ただし、多くの不確定要素が含まれることから、状況を注視しながら随時見直しを行っていくという。

 経営状況の見通しを受けた経営健全化の施策としては、下水道施設の運転維持管理を包括委託しているクリアウォーターOSAKA(CWO)と新たに20年間の長期委託契約を締結する。平成29年度からの5年間の契約で約55億円のコスト削減効果を発現したが、さらに20年間の長期契約を結ぶことにより、多様な雇用形態の活用等による効率化や新技術導入の促進等を図り、20年間で約320億円のコスト削減効果が得られる見込みだという。


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