健全な水循環 産官学民で発信 世界水フォーラム、日本パビリオンが盛況 マイクリップに追加
24日に幕を閉じた第10回世界水フォーラム(インドネシア・バリ)の併催展示会では、日本水フォーラムが主催する日本パビリオンが設けられ、企業・団体らは日本が水循環基本法の下で進める「健全な水循環」をテーマに産官学民の知見、技術を発信し、多くの来場者でにぎわった。
日本パピリオンでは、上下水道に限らず農業、土木、国際貢献と幅広く水とつながる企業・団体が製品・技術・事例の紹介に取り組んだ。展示会会場の入口最前部の一等地にブースを構えていることもあり、終日多くの視察者でにぎわった。出展企業は、インドネシアをはじめとする東南アジアでビジネス展開を行っている企業が多く、これまでの実績を全面にPRに力を注いだ。
東京都下水道局ブースでは、老朽化対策、豪雨対策、再生可能エネルギーに資する技術の提案に取り組んだ。過密都市部でも非開削で管路改築を行うことができるSPR工法、リアルタイム降雨情報を広く住民・事業者向けに配信する東京アメッシュ、焼却炉運転と連動した含水率コントロールにより最適燃焼を促すことによる省エネ、高温焼却による温室効果ガス排出抑制、そして廃ガス利用による創エネを両立した次世代型焼却システムなど、大都市東京都が培った知見ノウハウを基に実用化につなげた課題解決技術の数々を紹介。今後、下水道整備が本格化していく同国での技術展開に期待を寄せた。
CWPと管清工業は、両社の合同会社(CWPG)らが隣国東ティモールで展開している水環境改善や雇用創出を目的とした技術人材能力開発プログラムや、水循環に関する学校教育などの取組みなどを紹介していた。
ヤマハ発動機は、小規模集落向けに展開するコンパクト浄水装置(クリーンウォーターシステム)が展示の目玉。砂ろ過や微生物処理による緩速ろ過方式を取り入れたシステムで、前処理・原水・バイオ・浄水槽から構成される。インドネシア国内で10数基、アジア・アフリカで50基以上の納入実績を誇る。
21~23日には、協賛の旭酒造の協力による「獺祭ナイト」(ジャパン・ナイト)が日本パビリオンブース内で開かれ、国内外で人気の「獺祭」の純米大吟醸酒を来場者に振る舞い、日本酒の文化を世界に発信しつつ多様なつながりを形成するサロンとして大きな役割を果たした。
ジャパン・ナイト最終日の23日には、「Why Water? Why GrassーRoots?」と題したスペシャルトークセッションを開き、2024年ストックホルム水大賞の栄誉に輝いた東京大学の沖大幹教授が司会を務め、旭酒造の桜井一宏社長、2024年京都世界水大賞を受賞したインドネシア・Youth Sanitaition Concernのイファ・レミさんらをスピーカーに招き、水の話を肴に日本酒を楽しんだ。
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期間中は、首長や企業代表など日本からもさまざまなVIPがパビリオンを視察した。
視察後のコメントは次の通り。
■三日月大造滋賀県知事
水がないと人類はじめ生物は生きてはいけない。水に関する今日的課題と、その課題克服の可能性を一堂に集結させた世界水フォーラムはとても意味がある。水の国、インドネシアで開催されることにも可能性を感じる。
滋賀県は47都道府県の一つに過ぎないが、日本で一番大きな湖(琵琶湖)をお預かりしている。一昔前は、(水質が)汚れて大変な時もあったが、それを克服して今の水環境がある。その経験を企業や次世代の方々とシェアしてより良い地域社会、世界づくりに貢献していきたい。そうした想いも込めて、今回展示やセッションに参加した。
■長谷川健司管清工業社長
当社は東ティモールで技術人材育成に関する取組みを行っていることもあり、今回、隣国のインドネシアで世界水フォーラムが開催されることを契機に、一度、同国のことを視察する意味も込めて出展を決意した。実際に来てみて、一番驚いたのが、海外VVIP参加者の多さ。国内の水関連展示会とは比較にならない規模感を目の当たりにし、国際的に水への関心の高さを如実に感じた。
水の国際展開では河川系が中心だが、われわれ下水道、水道サイドも今後はもっと関わりを持った方が良いと強く感じた。生活の身近にある上下水道という狭い世界のみならず、広く水を捉える視野の広さを培うためにも、世界水フォーラムという催しは大きな意味を持つ。視野を広げた結果として、われわれの立ち位置を見つめ直すきっかけにもなるのでは。