忙中閑話 日本ヒューム代表取締役社長・増渕智之氏 マイクリップに追加
経営と現場に接点、交流を
わが国の近代下水道の時代から管路整備の一翼を担い、歴史を刻んできた総合コンクリートメーカー「日本ヒューム」。1日に増渕智之氏が代表取締役社長に就任した。約10年前には経営企画部長の職責に身を置き、当時からさまざまな経営課題に向き合ってきた。
経営トップとなった今、実践できたこと、未達の課題を整理し、これからの戒めや目標とする。「当社は令和7年(2025年)に創立100周年を迎える。その節目に向け今、目の前の経営課題に向き合いつつ、100年を越えた先に次の100年への道筋を立てること、そのために次代を担う人材育成、社員のチャレンジを奨励する環境づくりを経営ミッションに据える」と力強く語る。
事業環境を見渡す中で、環境・エネルギー、インフラマネジメント、防災減災、さまざまな切り口からの貢献策を描く。中でも脱炭素社会の実現に向けては長寿命かつ環境負荷低減をコンセプトとした新材料『e-CONⓇ』の事業化を急ぐ。一方、インフラマネジメントでは新たに下水道管路メンテナンス事業部を設立し、新設から更新に至るサイクル全般で同社の存在感を強めていくという。
信条は現場第一主義。「以前、旧川崎工場跡地の土地活用として屋内スノーボード場の運営事業を手掛けていた際、責任者ではないながらも経営改善に当たる機会に恵まれた。本社から頭ごなしに指示を出すのではなく、まずは現場に飛び込み、仲間としての信用を得て、チームとして動くことの大切さを学んだ。そこで働く人に関わり、彼らのやる気を鼓舞するためにはどうしたらいいか、時には上司とぶつかりながらも躍起になった日々が懐かしい」と目を細める。失敗を恐れず、火中の栗を拾いに行くことを厭わないバイタリティに溢れる人柄だ。
その姿勢はこの4月の機構改革にも表れている。コーポレートガバナンス体制強化の一環で設置した経営会議・拡大経営会議は、経営と現場をつなぐ場として設置したもので、双方向のコミュニケーション円滑化を見込んでいる。「現場の想いを経営へと吸い上げる仕組みこそ、さらなる成長には必要。経営と現場、異なる事業を担当する人と人、新たな接点、交流を持たせるところから課題解決やイノベーションが生み出される」が持論。
「親族含め誰も歩んだことのない道を進みたい」が進路選択の決め手となり、大学時代は農業土木を専攻。卒業後に改めて自身の進路を見つめ直し、高校時代から興味関心の深かったIT分野に絞り、ソフトウェア会社に就職した。システムエンジニアとして顧客企業の業務システム構築を担当する中で出会ったのが今の会社で、当時26歳。その後、縁あって社内SEとして同社に採用されることとなった。情報システム部署から社歴を重ね、経営戦略部署と統合される中で経営企画を任され現在へと至るなど、異色の経歴の持ち主。
【増渕智之(ますぶち・ともゆき)氏の略歴】宇都宮大学農学部卒業。平成4年日本ヒューム入社。26年取締役経営企画部長。29年常務取締役管理本部副本部長兼総務部長、経営企画部長。令和2年専務取締役管理本部長兼総務部長、経営企画部長、不動産・環境関連事業部長、セグメント部、下水道関連事業部管掌などを経て現在に至る。旭コンクリート工業、NJS社外取締役も歴任。昭和39年11月6日生まれ、栃木県出身。