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2022年105日 (水) 版

東大島幹線及び南大島幹線建設プロジェクト シールド工事の集大成 連載④ 発注者の声  マイクリップに追加

シールド技術の進歩、如実に 綿密な協議、配慮で安全施工

橋本課長

 異常気象に伴う豪雨被害が頻発する中、東京都においても雨水幹線や雨水ポンプ場の築造といった浸水対策は重要な取組みの一つだ。とりわけ東京都東部地域は地表が低いことや周囲を都市河川に囲まれたエリアの中に住宅密集地域があるという地理となっていることからも、都民生活の安全安心の確保、防災減災の徹底の観点からも施設整備が急がれる。

 日本有数の成熟・過密都市であり、高度に地下利用が進む東京での幹線築造工事は困難を極める。東京都下水道局第一基幹施設再構築事務所工事第一課の橋本勝課長は「都市開発や他事業でのインフラ整備が盛んに行われていた名残の地中埋設物は、図面に正確な位置が記されていないことも多く、掘り進む中で支障物に突き当たることもある。切断・除去する手段がなければ地上から掘り起こすなどの代替手段となるが、東京都のような過密都市では用地確保も困難。地域住民の生活への影響なども考慮すると避けたいところ」と話す。

 予期せぬ地中埋設物によりシールドマシンが損傷する事態となれば工事を中断するほか余儀ないケースもある。それだけに地中探査と切断・除去技術、そして地盤改良技術まで包含し、地中側から全てを解決できるDO-Jet工法という技術が際立つ。橋本課長は「近年のシールド工事の技術の進歩を如実に感じている。これまでも都内で多数の支障物撤去を実施しており、シールド坑内からの撤去として最も実績を積んだ技術」と述べる。

 経験工学が基本の土木工事の中でも、過密都市部でのシールド工事はまさにその集大成といえる。初めてづくしの今回の案件では、工事を主導した鹿島建設の施工管理能力の高さ、安全施工へのきめ細やかな配慮や工夫が難工事の着実な遂行には不可欠であった。

 橋本課長は「その4工事区間の既設構造物対策は細心の注意を払った。既設の下水道幹線では許容沈下量±12mmに対し-1mm、都営新宿線大島駅では同±5.8mmに対し-2.4mmと、非常に高精度かつ安全に配慮した施工を実現していただいた」と受注者を評価。

 また、「大口径親子シールドマシンの発進、DO-JetでのPIP杭の除去、輻輳する地下インフラとの近接工事など非常に困難な現場を受注者と綿密に協議を重ねることで無事に工事を終えることができた」と振り返る。

 今回の東大島幹線・南大島幹線建設工事は一段落を迎えるが、上流側の東大島幹線および下流側の小松川第二ポンプ所の建設工事がこれから本格的に始まる。東部地域の浸水対策の充実へ、東京都の取組みはこれからも続く。(終わり)


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