NJS、ドローン点検で新会社 水上走行機器を実用化 マイクリップに追加
6月に事業開始
NJS(村上雅亮社長)は4月27日、新たな点検調査機器「水上走行ドローンWater Slider(WS)」を開発・実用化し、業務を受注したことを明らかにした。また同日開催の取締役会で、ドローンによるインスペクション(点検)サービスに係る新会社「FINDi(ファインドアイ)」を今月中に設立、6月から事業を開始することを決議した。
NJSはインフラ管理の効率化を目的として、平成29年4月に閉鎖性空間点検調査用ドローン「Air Slider」の開発に成功して以降、技術開発を継続的に進めるとともに、ドローンを用いた下水道管等の点検調査を全国で実施してきた。ドローンを用いた点検調査の業務受注実績は、一昨年度が5件(売上高=約576万円)、昨年度が9件(同=約4213万円)で、今年度はすでに13件を数えている。
同年10月には社内にドローン開発部を設置し、技術開発を継続的に進めており、この4年間にわたり国内外数十カ所で実証試験を実施してきた。30年5月には「下水道管路等の閉鎖性空間点検調査用ドローンに係る開発」が、第2回インフラメンテナンス大賞国土交通省特別賞を受賞。同月には「ドローンを用いた下水道管渠の点検・調査手法に関する共同研究」を、横須賀市および高杉商事と開始。令和元年5月には、国内外の水力発電所鉄管におけるドローンを活用した点検事業への参入を目的に、関西電力および環境総合テクノスと業務提携に関する契約を締結。昨年4月には農業分野における施設管理ドローンの活用に向けた新会社「北王インフラサイエンス」を設立するなど、ドローンを用いたインフラ管理技術の確立と適用分野の拡大、サービス体制の整備に向け、歩みを重ねてきた。
こうした経緯を経て、ドローンを用いたインフラ調査技術が実用段階に入ったこと、下水道施設をはじめとする多様なインフラへの適用について確認できたことに加え、流水のある供用中の施設に対応した水面走行型の機体「WS」が完成したことから、NJSは新会社「FINDi」を設立して事業化を加速することを決めた。
新会社は、NJSとドローンの共同開発者である自律制御システム研究所(ACSL)との共同出資により設立し、インフラ管理に関するサービス提供とともに技術開発を引き続いて行っていく。
新会社の主な事業内容は、次の通り。
▽上下水道、道路、橋梁、発送電、農業用排水路、工場等のインフラ管理(点検・調査・診断)に関するサービス提供▽ドローン等ロボティクスを活用したインフラ管理に関する機器の開発と販売▽インフラ管理に関するシステム開発と販売▽インフラ管理に関する技術者の養成。
下水道では管路や処理場、水道では導水管や導水トンネル、配水池、浄水場、その他として農業用排水路、道路雨水排水管、水力発電鉄管などを適用分野として想定している。
役員は次の通り。
▽代表取締役社長=稲垣裕亮NJS開発本部ドローン開発部長▽取締役=竹田功NJS執行役員東京総合事務所長▽同=早川研介ACSL取締役▽監査役=石田純一NJS企画広報室。
新会社の目玉技術の一つである「水上走行ドローンWS」は、水上を一定速度で走行し、搭載した複数台の高性能カメラで、管内を撮影することで精度の高い点検調査を行うもの。
流域下水道幹線管路や中大規模都市の処理場に近い部分の中大口径管路は、常時供用中のため水深が深く、点検調査が非常に難しい状況となっている。潜行目視やマンホール内からの点検等が実施されているものの、供用開始以来、一度も点検ができていない管路も多い。「WS」はこのような点検困難箇所への適用が期待されており、昨年12月に函館湾流域下水道で業務を受注している。