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エアレーション 「ささやかな取組み」楠瀬耕作(須崎市長) マイクリップに追加

 私が須崎市長に就任した2012年、当市の実質公債費比率は21%を超えており、全国約1700の市区町村の中で、借金の重さはワースト10に入っていた。財政再建は私に課せられた大きな命題である。人員削減や事業・補助金の見直しなど考えられる措置を次々と講じたが、一方で、社会保障費の増大や老朽化対策など新たな財政需要も発生し、トンネルの出口は模糊として見えない状況が続いていた。そんな中で着目したのが、一般会計からの繰出しが多額であった下水道事業の改善であった。

 当市はリアス式海岸を有し、四国一の貨物量を誇る須崎港に市街地が張付いている地形で満潮時に大雨が降ると市街地が浸水する状況だったので下水道事業は雨水対策が先行。下水道の整備を本格化させる段に財政難に陥り下水道の面整備は計画の7%に留まったまま。

 それに対し1995年に完成した終末処理場は計画全域容量で建設されており稼働率の低さが問題であった。2013年に実施したシミュレーションで今後面整備をしてもしなくても経営改善が見込めないことが判明。老朽化した終末処理場のダウンサイジングが急務と判断した。

 幸運にも2016年に国のBーDASHプロジェクトにより下水道施設のダウンサイジング実証研究の場所に選定いただき2017年に新処理場が完成。同時にPFI法第6条による民間提案を受理し、コンセッション方式の検討を開始。過疎地域下水道の先導的モデルとして、汚水管・終末処理場の運営権、漁業集落排水処理施設と不燃物処理場の管理をバンドルし、2020年4月よりNJSを中心とするSPCに運営移譲。全国で2例目となる下水道コンセッションを始動させた。20年間でVFMを約7.6%見込み、その他、事業者より付帯任意事業として多様な収入増加策を提案いただいており、過疎自治体では持ち得ない技術や事業を展開することで不良息子が期待の息子に生まれ変わった。

 人口減少が進む中で下水道事業をどう維持するか、多くの自治体が悩まれているのではないか。人口変動に追随できる処理技術とバンドリングでのコンセッション。ささやかな取組みであるが、一つの指針となれば幸いである。財政再建はこの効果もあり、2019年決算で実質公債費率は16%となりトンネルの出口が見えてきた。


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