老朽化対策2技術実証へ 前田建設、熊本市・管清工業と劣化予測・空洞点検ロボで マイクリップに追加
前田建設工業(前田操治社長)は11月28日、熊本市上下水道局および管清工業(長谷川健司社長)と共同で、2種の技術の実証を開始したことを発表した。熊本市下水道管路施設包括的維持管理業務委託(中央区)の対象施設で、硫化水素の生成から劣化までをシミュレーションで診断できる「硫化水素劣化予測診断技術」および、無人で管路内から管路周辺の空洞を調査できる「空洞点検ロボット技術」の実証を進め、来年3月ごろの実用化を目指す。
実証を行うのは、熊本市下水道管路施設包括的維持管理業務委託(中央区)の対象施設となっている中継ポンプ場・マンホールポンプ・伏越し部計79カ所。
「硫化水素劣化診断技術」では、1990年代に国際水協会によって提唱された硫化水素生成予測手法「WATSモデル」を用いる。同モデルは、管きょ内における好気・嫌気状態での有機物と硫黄化合物の変質に関するプロセスを考慮し、硫化水素生成についての精度を向上させることを目的としたもの。管路・人孔の基本情報(設置年度、材質、管径・深度等)、定期点検状況(劣化状況の進行)、汚水・汚泥のサンプリング分析(微生物の地域性)により、従来考慮できなかった要素を考慮した管路全体の劣化予測をシミュレーションでき、管路全体の劣化・老朽化のリスクを可視化する。
「空洞点検ロボット技術」は、無人で管路内の天井部を走行できる点検ロボットにより、電磁波レーダーを用いて管路内から直接、管路背面(管路の外側)の空洞を調査するもの。調査員の立ち入りが困難となる管路内でも遠隔操作により安全に調査を遂行でき、初期空洞の検出が可能となる。「硫化水素劣化予測診断」によって高リスクと判断された箇所に対する状態監視への活用も期待できるという。
同社は今後、老朽インフラの維持管理について、これまでの定期点検による事後保全型の管理に加え、劣化予測と状態監視を併用した予防保全型の管理や、リスクとコストを総合的に判断した最適な更新・更生の計画を地方自治体向けに提案していくとしている。

