10周年の節目、成果報告会を開催 フソウ技術開発振興基金 マイクリップに追加
フソウ技術開発振興基金(野村充伸代表理事)は11月27日、高松市内のフソウテクノセンターで、成果報告会を開催。同基金から助成を受けた5人の研究者が、研究成果を発表した。
冒頭あいさつした野村代表理事は、「当基金は、水、エネルギー、環境という持続可能な社会の基盤を支える分野における研究開発を支援することを目的に設立され、今年で10周年を迎えた」と設立からの歩みを振り返り、感謝を述べるとともに、「この10年間で応募研究は248件に達し、延べ112件の研究を支援し、数々の成果を生み出すことができた。特に、萌芽的な基礎研究を中心に助成、支援を行うことに焦点を当てた。これらの研究は、この成果をもとに、科学技術振興機構や新エネルギー・産業技術総合開発機構などから多くの研究開発資金を獲得するに至り、成長を続けている」と語り、これまでの成果を強調した。
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の橋口亜由未助教は、2020~2022年に▽波長選択性を考慮したUV―LEDによる再生水中の難分解性有機汚染物質の分解▽多波長同時複合照射による水中医薬品類分解阻害理由の究明と分解条件の最適化▽化学形態ごとに異なる塩素化合物のUV吸収特性を利用した水道水中臭気物質の除去――の3テーマで助成を受けた。成果報告では、水俣条約による水銀の使用規制が数年後に迫り注目されている、水銀フリーのUV光源であるUV―LEDを用いた水中医薬品類および臭気物質の分解について解説した。
北海道大学大学院工学研究院の白崎伸隆准教授は、2018~2020年に▽水道原水中に高濃度で存在するトウガラシ微斑ウイルスを指標とした実浄水場におけるウイルスの処理性評価▽遺伝子封入VLPsを用いた培養困難なノロウイルスの浄水処理性評価▽浄水処理におけるヒト感染コロナウイルスの除去・不活化特性の評価――の3テーマで助成を受けた。成果報告では、トウガラシ微斑ウイルスが代表的な病原ウイルス9種と比べて100倍以上の高濃度で水道原水中に存在していることや、同ウイルスを用いることで、凝集―膜ろ過を実施している浄水場におけるウイルス処理の評価に成功したことなどを紹介した。
京都大学大学院地球環境学堂の日髙平准教授は、2020、2021年に自己造粒藻類による小規模向けエネルギー回収型下水処理技術の開発のテーマで助成を受けた。成果報告では、標準活性汚泥法において自己造粒藻類を用いて曝気に用いる酸素の一部を供給しつつ、藻類の投入によって増加した汚泥を嫌気性硝化によってバイオガス化する技術について解説した。
東北大学大学院環境科学研究科の久保田健吾准教授は、2017、2024年に▽新規エネルギー自立型下水処理システムにおける健康関連指標微生物除去プロセスの開発▽新規N2O除去プロセスに温度が与える影響の解明――の2テーマで助成を受けた。成果報告では、DHS(下降流スポンジ懸垂)処理水にウキクサを浮かべて窒素・リンを除去するシステムを紹介し、同システムで大腸菌も減少することを確認したことを述べ、そのメカニズムは根への付着や、根圏微生物の作用であると推測した。
東北大学金属材料研究所の芳野遼助教は、2023、2024年に▽優れた電子供与部位を有する共有結合性金属―有機構造体の二酸化炭素光還元触媒能の評価および機構解明▽窒素循環社会を担う革新的な低濃度アンモニア分離・検出技術の開発――の2テーマで助成を受けた。成果報告では、金属錯体を用いた多機能性材料によるセンシングについて紹介した。
今年度研究助成対象、13件を発表
フソウ技術開発振興基金(野村充伸代表理事)は11月18日、2025年度の研究助成対象13件を発表した。10月27日に開催された2025年度研究助成選考委員会での審議を経て、決定されたもの。
同基金は、フソウの創業70周年記念事業の一環として2016年に設立。水処理技術、水インフラ設備をはじめとする水事業や環境・エネルギー事業における研究、技術開発および製品開発等に対して助成・支援を行ってきた。
助成対象の研究課題と代表者は次の通り。
▽「N2O除去プロセスから発生するメタンの抑制技術開発による環境負荷低減効果の最大化」久保田健吾(東北大学)▽「カチオン性空間を用いた毒性有機フッ素化合物の革新的分解技術の開拓」芳野遼(東北大学)▽「蛍光標識を用いた環境マイクロ・ナノプラスチックの双方に使用可能な分析手法の開発」田野入開(産業技術総合研究所)▽「水素エネルギー活用に向けた新規イオン伝導体の創出」齊藤馨(東京科学大学)▽「繊維状ウイルスからなる二酸化炭素分離膜のデータ駆動型構築」澤田敏樹(同)▽「飲料水の安全化に資するマイクロプラスチック選択的分離基盤技術の確立」八木一平(東京都立大学院)▽「海水浄化におけるオゾン・塩素処理の最適化―アンモニア除去と色度・臭気低減―」川口康平(京都大学)▽「難分解性有機物の高効率酸化分解を志向した可視光応答型光触媒膜の開発」冨田修(同)▽「短鎖PFASを高効率に除去するナノ界面吸着材の創製」高見大地(大阪大学)▽「電気分解法を利用した汚泥由来リンの析出・回収に関する基礎的研究」高部祐剛(鳥取大学)▽「植物生体電位とニューラルネットワークを融合した土壌・地下水汚染検知システムの開発」古川全太郎(岡山大学)▽「沿岸海域における海洋細菌の耐性判定手法の開発および薬剤耐性実態の調査」吉本龍晟(高知大学)▽「大腸菌の自動検査技術に関わる開発」Boivin Sandrine(長崎大学)






