特別企画「ウォーターPPPの導入と展望」 官民連携成功に向けたヒントを探る マイクリップに追加
下水道展’24東京の特別企画「ウォーターPPPの導入と展望」が7月31日、TFTビルで開かれた。ゲストスピーカーとして登壇した三井住友トラスト基礎研究所の浅川博人氏が、ウォーターPPPの実務上のハードルに焦点を当てて、下水道分野での導入・展開に向けた見解を披露したほか、コンセッションや包括的民間委託を手掛けるメタウォーター、奥村組、管清工業の担当者が登壇し、コストダウンや担い手不足への対応など官民連携における考えを議論した。
近年、特に注目を集めているテーマとあって、会場は地方公共団体からの聴講者で満員。サテライト会場も合わせて、300人を超える参加があった。
浅川氏は、インフラにおけるPPP/PFIは非常に期待されながらも、維持管理・更新においてその効果が実証されたとは言いづらいと指摘した。
下水道分野でのPPP/PFIの目的が、コスト縮減に焦点が当たる傾向がある一方で、行政が担っていた分野に民間事業者が入ってくることによるスキームが複雑化するなど「下水道分野におけるPPP/PFIの狙いは単純明快ではない」と指摘した。
ウォーターPPPのうち管理・更新一体マネジメント方式については、4要件の一つとなる原則10年間の長期契約に言及した。インフラ事業への投資の効果を得るためには「10~20年程度かかる」と述べつつ、最も重要な点として人に関する問題を解決するためにこの契約期間をどのように活用するかが大きな論点となるとした。
ウォーターPPPを導入するのであれば、これを結果に結び付けたいというのは官民の共通認識としつつ、その答えは自治体の規模、施設の構成割合の違いによってまちまちになると指摘。事例紹介を通じた知見に期待を寄せた。
事例紹介では、宮城県での上工下一体のコンセッション事業を手掛けるメタウォーターから高橋正章氏、柏市で管路の包括的民間委託を手掛ける奥村組から山本淳史氏、鶴岡市で同じく管路包括を手掛ける管清工業から田村司郎氏がそれぞれ登壇。各社の事例とともに、その課題などを解説した。
高橋氏は、ウォーターPPP拡大のために必要な点として、過度に民間にリスクを負わせない適正な分担、コストダウンだけでないVFM、広域化やバンドリングによる規模の確保、事業化に向けた官民対話を挙げた。
山本氏は、大手企業が包括的民間委託に参画するメリットとして、行政サービス水準のベースアップ、意識改革を通じた地元企業の業務水準のレベルアップ、業務効率化に向けた新技術・システムの導入の動機付けとなることなどを挙げた。
田村氏は、官民連携を成功させるために考えられるポイントとして、自治体があるべき姿を明示すること、対等な立場での意見交換、民間を奮起させるための雰囲気づくり、民間の提案を柔軟に受け付けることなどを挙げた。
続くパネルディスカッションでは、コストダウンや担い手不足への貢献、地元企業との関係などを切り口に展開。
コストダウンの観点では、官民連携では雇用の継続や人材育成などバリューアップの要素があることを念頭に、「これを適正に評価する方法があれば、地域の下水道事業が持続的になっていく」という提案や、「(コストダウンではなく)かけたコストをいかに最大化するかという点を考えていくことが良いのでは」などの意見が出された。
また地元企業との関係では、「災害時には地元が真っ先に動く。(地元を)ないがしろにすることはない」「地元がやるべき業務と大手がやるべき業務を切り分ける必要がある」などの意見が共有された。