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点検困難箇所の実態把握へ NJS、管口カメラ・ドローン活用 マイクリップに追加

2023/12/13 産業 製品・技術
選定フロー

施設点検・調査の新手法

 全国約2200カ所ある下水処理場。その多くは平成5、6年からの10年間で供用開始を迎えている。防食被覆層の標準的な耐用年数である10年、15年のサイクルで見れば、すでにこれらの処理場においても、常日頃からの巡視に加え、土木構造物の劣化点検・調査に本腰が入り始める頃に思える。

 一方で、下水処理場においては供用後に作業員が内部に入ることができない箇所、いわゆる点検困難箇所での躯体の劣化や腐食の実態把握をいかに行うかが維持管理上の悩みとなっている。こうした中、NJSではドローンや管口カメラを活用した点検困難箇所における土木躯体の点検手法の確立に向けた検討を進めている。

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  • 管診鏡MCでの撮影結果
  • 放流渠気相部の撮影結果
  • 放流渠水中部の撮影結果
  • 水路内の撮影結果(上向きカメラ)
  • 管診鏡PCでの撮影結果

 下水処理場やポンプ場における点検困難箇所は具体的にどのようなケースが想定されるか。NJSでは、大きく四つのケースを点検困難箇所と定義付けている。

 具体的には、①点検するための開口部が小さい施設②人が中に入ることが容易ではない施設③常時水に浸かっている施設④足場を組まないと確認できない施設――となる。

 ①については、水処理施設の沈殿池が完全覆蓋化され、点検用の開口部から内部を限定的にしか視認できない状況などが該当する。②については水替えなどにより一時的にドライ化しないと作業員が入ることのできない水路、③については吐き口などが該当する。④については煙突外壁などが該当する。

 下水道施設においてコンクリート腐食が進行しやすい環境は、特に①~③のケースが当てはまることが多い。「水替えや足場の設置により点検・調査が行えることもあるが、従来の手法では時間やコストが嵩んでしまう。何よりもそうした点検困難箇所は危険ガスの発生や高所作業を伴うなど作業員の安全衛生面においても懸念があった」とNJS担当者は話す。

 NJSでは近年、主軸のコンサルティング事業以外にもインフラの機能維持や効率的管理を目的にインスペクション(点検・調査・診断)事業の拡大を進めており、この中では下水道施設地の点検・調査用ドローンや管口カメラなどの開発・実用化を進めてきている。そうした開発成果の一部を用いる形で、各ケースに対応した点検・調査手法を実フィールドにて検証することとなった。

 開口部が小さい施設(①のケース)では、管口カメラ(管診鏡PC/MC)による内部確認が有効としている。点検用の長尺棒の先端に高解像度カメラやLEDライト等を取り付けた機器で、開口部からおよそ15m以内の壁面状況の確認を行うことができるという。

 人が中に入ることのできない施設(②のケース)では、主に水路を想定し浮流式ドローン(Water Slider W4)による気相部の点検を提案している。浮流式ドローン本体上部には、高解像度カメラや360度カメラなどを状況に応じて取り付けが行えるとのことで、実際に撮影した映像からコンクリートの剥離・ひび割れや躯体表面の変色などといった異常・劣化の把握に活用できることを確認している。

 そして、常時水に浸かっている施設(③のケース)では、潜水式ドローン(FF1)による水中点検を提案している。一定以上の濁度がある水質では不適なものの、最終沈殿池より下流、放流きょ、吐き口内部といった施設であれば視認性に問題ないとのことで、気相・液相部の同時点検にも対応する優れもの。これらのラインアップを状況に応じて使い分ければ、おおよその点検困難箇所の状況把握を行えるようになる。ドローンに取り付けることのできる機器としては、高解像度カメラ以外にも赤外線カメラや音響ソナーなどのバリエーションもあるとのことで、今後の検証次第ではより高度な点検調査業務の提案にも期待が集まる。


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