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2023年1129日 (水) 版

仰師録⑤ 長谷川健司・管清工業代表取締役 マイクリップに追加

勤め上げ、歴史つくる姿に救われて

鈴木敦雄氏

 下水道管路管理業界には実務経験者が少数で、管清工業には、歴史とともに経験を積んだ人材がいます。創業者の長谷川正が米国から管路管理業を持ち込んだことを考えればごく自然なことです。

 私はある元従業員の生き方を尊敬しています。その方は現在83歳で、今年の6月で当社の監査役を退任された鈴木敦雄氏です。彼は18歳で日米産業(現(株)カンツール)に入社し、管清工業の創業から勤め、当社グループに65年間勤務されました。その間、長谷川家親子3代に仕え、この業界の現場を作り上げてきました。

 今でもわれわれは先人の後を辿りながら仕事をしています。何も教科書がなく、業務に創意工夫を必要とした時代、現場からのアイデアで作成された機器は、現在、長谷川記念館(厚木市)に展示されています。

 かつては「下水道の管路管理は何をするのですか?」とよく聞かれました。まさに、その時代を生きてきたのが彼でした。

 私は子どもの頃から彼を見ていましたし、社長になった時も会長(長谷川清)と私の間に入り、孤軍奮闘してくれていました。個性の強い親子でしたからとても苦労が多かったであろうと思います。

 ゴルフが上手な彼にしばしばゴルフを教わりました。その時彼は、私に対して、上から目線で指導をしてくれました。そのような関係はとても大事で、仕事上の言い難いことも私的な場面で話してくれたことはとても社長業には助かりました。3代目は仕事をわかっていないと言われないように助けてくれていたと今でも思っています。

 今年、創業60周年誌を発刊した折、編纂中の写真を見ても50年以上前のことはよくわからず、彼に確認をとりました。まさしく生き字引の感でした。編集員や私は気付かなかったのですが、初期の現場写真には彼自身が写っており、本人から「これ俺だよ!」と言われ、よく見るとかつての面影を見ることができました。また、何のための道具なのかわからず彼に聞くと、かつては機械の代わりにこのような道具を使っていたのだと判明し、機械の変遷を知ることができました。

 私が現在置かれている環境は、彼のような諸先輩が居たからこそ成立していると思います。

 社会的に名を成すよりも企業や業界に歴史をつくる存在の方が名誉なことなのかもしれません。個人の名前は忘却されても、機械や手法は時代を越えて、後進へと引き継がれます。私は彼のように企業、業界を勤め上げる人が尊敬できる先輩だと思っています。

 当社グループや下水道管路管理業界も先人を大事にし、若いエネルギーで前に進めていけたらと思います。私はそこの橋渡しの役目をいたします。


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