東大島幹線及び南大島幹線建設プロジェクト シールド工事の集大成 連載③ 難所続き、地中支障物への対応 マイクリップに追加
支障物除去しつつ地下鉄横断
その2・3工事と数々の難所を越えた先、その4工事では今回の幹線築造における最大の山場である都営地下鉄新宿線大島駅直下を横断する区間が待ち構えている。上部には大島駅、電力通信共同溝のほか、既設の下水道幹線が輻輳しており、それに加えて駅舎および共同溝建設時に地中に残置されたままのPIP杭数十本がある中をシールド掘進することになるなど、綿密な施工計画と掘進技術が要求される屈指の難条件だ。今回、DO-Jet工法が設計で採用された決め手ともいえる。
DO-Jet工法は、超高圧ジェットシステムを用いてシールド機・推進機内から、非開削・非接触で地中支障物の探査、地盤改良、切断・除去を可能にした画期的工法で、これまでも東京都で多数の採用実績がある。一つのマシンにて地中で想定されるあらゆるトラブルを解決に導く高性能掘削技術だが、PIP杭の切断・除去についてはDO-Jet工法にとって初の試みだった。
大瀧真道次長は「掘進位置が大島幹線直下の位置のため、万が一カッタービットが支障物とぶつかったまま掘り進んでしまい損傷する事態となれば掘り起こして交換することもできないという緊張感があった」と振り返る。
シールド工事では、どうしても当初設計にはない想定外の事態は起こり得るもの。あらゆる事態を想定し、安全側に配慮した確実な施工が求められる。特にカッタービットを死守することは優先事項であったため、施工計画を立案する上でも細心の注意を払った。支障物切断・除去の流れとしては、カッタートルクに上限値を設定しつぶさに監視を行い、異常値が認められれば支障物との接触によるものと推定し、切断・除去工へと移行するよう施工計画で取り組めた。PIP杭の切断・除去をより確実かつ安全に行えるよう、切断形状や取り込む際の大きさを考え、切断線をシミュレーションし、切断用ノズルの噴射パターンを変更したりと、試行錯誤を繰り返した。
当初、大島駅を通過するまでに60本ほどのPIP杭が支障になると想定されたが、実際には22本に収まった。しかしながら前方探査の段階で当初図面では想定していなかった壁状支障物があることが判明するなど、イレギュラー対応に見舞われつつも着実に地盤改良ならびに切断・除去工を進めた。
また掘進に当たっては、駅構内や共同溝に沈下計を設置し常時モニタリングしたほか、路面の変状測量にも注意を払った。綿密かつ安全重視の施工が奏功し、上部構造物等に影響を及ぼすことなくカッタービットの摩耗量も想定域内のまま無事掘進を完了している。今後は急曲線箇所の鋼製セグメントと幹線全体のインバートの二次覆工を残すのみで、10年以上に及ぶ一大プロジェクトも終わりが見え始めている。(続く)