東大島幹線及び南大島幹線建設プロジェクト シールド工事の集大成 連載② 難所続き、その2・3工事 マイクリップに追加
親子方式で断面変化に対応 既設幹線直下を高精度掘進
その2工事では、小松川第二ポンプ所から発進し、三つの急曲線施工箇所を連続的に抜けた先で、最初の難関である水管橋基礎との近接施工箇所へと差し掛かる。
最少離隔5mの距離で基礎付近をシールド掘進することになるため、上部構造物への影響を最小限に抑えるべくシールド機内から超高圧地盤改良による防護対策を施した後、第5大島小学校前の交差点付近まで掘り進んだ。
発進立坑から仕上がり内径φ6000で掘進してきたが、この地点からは一回りサイズダウンし、仕上がり内径φ4500で掘進する。鹿島建設大島幹線工事事務所の大瀧真道次長によると「将来的にこの区間で支線が合流する計画となっており流量断面を大きく取る必要がある関係上、下流側の第二小松川ポンプ所側の区間は内径を大きく仕上げる必要があったため」とのことで、そのオーダーに応えるべくシールドマシン自体や施工方法に工夫を凝らした。
異なる内径のシールド幹線を構築する手法として、今回シールドマシンン本体には親子シールドと呼ばれる構造を採用している。シールドマシン内に、一回り内径の小さいシールドマシン(子機)を搭載することで、途中で子機のみが親機から分離・掘進する機構となっている。内径断面を変化させたシールド幹線を連続的に構築することができる。
途中で割込み人孔のように再度発進立坑を設けることができれば良いが、過密都市部ではそうした用地を確保することは現実的ではなく、上部交通や周辺環境にも支障を与えてしまう。地中側のみで完結できる点が親子シールドの利点であるが、子機を発進される際の反力を安全に伝達させるにも細心の注意が必要とのこと。
特に今回の工事では通常とは異なる子機発進方法を採用しており、緻密な構造計算を行うなど万全を期した。この親子シールド分離後は都道直下を約690m西進。丸八橋北詰交差点直前の地点まで進み、無事その2工事を終えている。
続くその3工事では、始点直後にR=25mの急曲線施工箇所を含むほか、北進する丸八通り直下には既設の下水道幹線(大島幹線)があり、この幹線直下を最小離隔1mで掘進するルートが採用されている。このため、余堀量が大きく脆弱箇所と懸念された急曲線施工箇所で超高圧地盤改良による防護を施すなどの安全対策を講じつつ、その3工事終点の都営新宿線大島駅近傍まで掘進を完了している。
祖父江所長は「1~2mの離隔で既設構造物の下を縦断方向で掘り進んでいくのは経験がないことだった」と苦笑いを浮かべつつ、困難と思える工事に怯むことなく真摯に取り組む姿に現場職人としての頼もしさを覚える。(続く)