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産学で社会実装を推進 下水サーベイランス協会が設立 マイクリップに追加

協会役員ら(前段中央が村上会長)

 下水サーベイランスの社会実装を推進するためのプラットフォームとして、一般社団法人日本下水サーベイランス協会が5月12日に設立された。下水中のウイルスを分析・監視し、感染症の流行状況の把握、効果的・効率的な感染防止対策の実施へとつなげるため、産学連携と実施体制の構築を目指す。会長にはNJSの村上雅亮社長が就任した。

 下水サーベイランスは、下水などの環境水中に含まれる病原体等を分析し、集団レベルの疫学情報を取得する調査のこと。調査の結果から地域での感染状況を把握し、感染対策や地域住民の行動変容に活用する。新型コロナウイルス感染症や今後起こり得る新たな感染症に対し、レジリエントな社会を構築していく有効なツールとして期待される一方、高感度分析法の確立と普及、効率的な実施体制の構築、感染症対策における活用方法等の課題もある。

 こうした中、これらの課題を克服し、下水サーベイランスを効率的かつ効果的に社会実装していくためには、産学の横断的な連携と実施体制の構築が不可欠であるという認識の下、同協会が設立された。会員構成は、下水採水業務を手掛ける施設・管路管理会社のほか、検査会社、理化学機器メーカー、試薬品メーカー、コンサルタントら13社。

 事業内容として下水サーベイランスの社会実装に関する調査・研究・支援や、社会実装に資する指針・基準の策定、資格の制定等に取り組む。全国展開の体制整備や普及推進方策の確立も目指すほか、関係官公庁への要望活動、国内外の情報収集と発信などを行う。

 5月24日に、報道関係者を対象に行われた設立発表会では、村上会長が、下水サーベイランスの定義や国内外におけるこれまでの動き、協会設立の経緯などを説明した上で、「ウィズコロナ時代、産学一体となった下水サーベイランスの普及活動が重要。早期の社会実装を実現するためには、情報の発信や技術の確立、サーベイランスに取り組めるプレイヤーを増やしていくことが不可欠。これらを中心とした協会活動を展開していく」と意気込みを表した。

 続いて、本多了理事(金沢大学地球社会基盤学系教授)が「下水サーベイランスには、採水・運搬・分析・情報の抽出という四つのコンパートメントがあり、これら全てを担える企業は少ない。得意分野を活かして、多くの企業に参画してほしい」、北島正章理事(北海道大学大学院工学研究院環境工学部門准教授)が「感染症の監視が下水道インフラの新たな役割の一つになることで、下水道の価値向上にもつながる。本協会が国内外へ研究成果を還元するためのプラットフォームとなることに期待したい」と意気込みを語った。

 協会の概要は次の通り。

 ▽名称=一般社団法人日本下水サーベイランス協会(略称:JWWSA)▽所在地=東京都港区芝浦1―1―1浜松町ビルディング14階(NJS内)▽役員=【会長】村上雅亮NJS代表取締役社長【副会長】小林博幸塩野義製薬DX推進本部デジタルインテリジェンス部長、的場俊英島津製作所執行役員分析計測事業部副事業部長、八十島誠島津テクノリサーチ執行役員兼環境事業部長、谷戸善彦FINDi顧問


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