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中堅職員が語る下水道の針路 21世紀協・国交省、3テーマでウェビナー開催 マイクリップに追加

2021/09/15 総合 国土交通省
官民で活発に議論(カーボンニュートラル編)

実現の方向性を提案

 21世紀の下水道を考える協議会と国土交通省は10日、ウェビナー「下水道界中堅職員が語るー我々が織りなす下水道事業ー」を開催した。9月10日の「下水道の日」に合わせた広報企画の一環。「カーボンニュートラルに向けた下水道の挑戦」「流域治水関連法の施行と今後の展開」「マネジメント時代における下水道事業の変革」の三つのテーマを設定し、各施策で一線に立つ国交省下水道部の若手職員に加え、自治体や公的団体、民間企業からの出席者が、その実現に求められる視点を提案した。【後日、詳報】

■カーボンニュートラル

 2050年カーボンニュートラルの達成、2030年度までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減するという野心的な目標が掲げられ、下水道事業にもその対応が求められる中、東京都下水道局、秋田県、日本下水道事業団、月島機械、メタウォーターからの出席者が、カーボンニュートラル達成に向けた取組みを提案した。

 自治体側からは、新技術の導入の必要性、さらには広域化・共同化を契機にした下水道が持つ資源としてのポテンシャルの再評価などが提案され、民間企業からは国の技術開発プロジェクトを通じた新技術の導入・水平展開、自治体の規模に合わせた技術導入といった視点が提示。

 JSからは、自治体の支援を通じて得られた経験をベースに、中小規模の自治体では技術者の不足で課題を十分に認識できていない点、自治体にカーボンニュートラルの重要性を浸透させることが課題だと提起された。

 国交省下水道部から出席した大上陽平下水道国際推進官は、「下水道として他産業にどれだけ貢献できているかの評価ができれば取組みの推進につながる。下水道界全体で課題の洗い出しを」と話題を総括した。

■流域治水

 気候変動の影響などにより、毎年のように豪雨に伴う水害が発生する中、国交省では、流域全体で水害を軽減させる「流域治水」を打ち出している。その裏付けとなる流域治水関連法が成立し、下水道事業においても対応が求められている。

 このセッションでは平成30年7月豪雨での被災を経て、水害に強い街づくりを進める倉敷市、大規模な内水浸水を契機に浸水対策に力を入れる横浜市から、ハード・ソフト両面での対策、他分野との協働などの事例が紹介された。

 倉敷市からは、水害で被災すれば、その復旧に長期間人的リソースを割かれること、事前防災の観点からの対策の重要性が示唆された。

 また国交省下水道部の橋本翼課長補佐は、下水道法や水防法の改正に伴う下水道事業の対応事項について解説し、自治体に対し、理解を呼び掛けた。

 JSからは災害時派遣の実績、今後増加する雨水管理総合計画策定ニーズに対応してく方針が示された。

 これらの議論を国交省下水道部の久岡夏樹課長補佐が総括。「下水道における浸水対策を流域治水プロジェクトに盛り込んでほしい。住民の意識向上も必要だ」と望んだ。

■マネジメント

 維持管理や改築・更新に事業の主軸が移るマネジメント時代に突入する中、国交省ではマネジメントの高度化に向け施設や維持管理の情報の電子化を推進しており、これにいかに対応していくか意見が交わされた。

 冒頭、国交省下水道部の末益博嗣課長補佐がマネジメント時代における施策方針を総括。維持管理情報を活用することでのマネジメントの高度化の流れを開設しつつ、その前提となる台帳の電子化の促進や、共通プラットフォーム(共通PF)の構築を進めることで業務の効率化を図っていくとした。

 仙台市、横須賀市からは、これまでの施設管理の現状とその高度化に向けた取組み事例が紹介され、電子化によって「台帳の精度向上、データ一元化による効率化、加工の容易化、視覚的に能力不足箇所が確認できる」などのメリットが生まれたと紹介。企業側からは、NJSがマネジメントの高度化に向けたコンサルタントの役割を、管清工業が管路管理の現場から見た電子化の持つ可能性について提案。

 これらの議論を踏まえ末益補佐は、「情報開示による官民でデータ共有できるためにも共通PF構築を進めていく」と締めくくった。


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