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官民連携で技術力確保 研究発表会、管路の老朽化テーマに議論 マイクリップに追加

技術継承の事例共有も

リモート参加を交え意見を交わした

 日本下水道協会は17日、大阪市内のATCで第58回下水道研究発表会パネルディスカッション「管路の維持管理~持続性、強靱性の確保に向けて~」を開催し、今後全国的に加速化する管路の老朽化をテーマに、先進自治体における民間委託や予防保全といったマネジメント事例の共有を図った。オンラインでのライブ配信も行った。

 はじめに、国土交通省下水道部下水道事業課事業マネジメント推進室の末益大嗣課長補佐(リモート参加)が「管路の維持管理~持続性、強靱性の確保に向けて~」と題し、老朽管の今後の増加により予防保全型の維持管理が求められている現状と、ストックマネジメント支援制度や台帳電子化の動向などについて講演した。

 続いて大阪市建設局下水道部の原田俊崇事業計画担当課長、横浜市環境創造局下水道管路部管路保全課の戸谷公朋担当課長(リモート参加)、柏市土木部下水道維持管理課の小泉雄司副参事、富田林市上下水道部下水道課の五枝茂幸整備係長が、各市の官民連携による管路マネジメントの最新動向を講演。

 原田担当課長は、大阪市の取組みとして詳細調査データを基に分析した劣化予測に基づき、平準化した改築事業量を算出していることや、経営体制を見直し上下分離方式を導入して維持管理の担い手であるクリアウォーターOSAKA(CWO)を設立し委託を行っていることを紹介。戸谷担当課長は横浜市の取組みとして、時間計画保全から状態監視保全への移行を目的に中大口径管の包括的民間委託を実施していることを紹介。小泉副参事は、柏市の取組みとして改築を主体とした管路の包括的民間委託を実施し、計画的な改築業務の実現に加え予防保全効果を発揮していることを紹介。五枝係長は富田林市の取組みとして、下水道管きょ長寿命化PFI事業として管更生工事を一括発注し、合わせて不明水対策として誤接続解消のための調査や工事を行っていることを紹介した。

 続いて、末益課長補佐をコーディネーターとしてパネルディスカッションを実施。「官民連携によるマネジメントの効果」について、五枝係長は「事業は小規模なので大きなコスト削減効果はないが、一括発注により職員の業務量が減った。また不明水対策で取付管とますを調査することにより管の詰まりも減った」、小泉副参事は「緊急修繕なども含めて未然に対処した結果、陥没・詰まり・苦情等が大幅に減り、予防保全効果を発揮している」、戸谷担当課長は「民間事業者との連携により、各業者の技術力の底上げにつながる。また調査不能箇所への新技術の提案も民側からあり、迅速性・安全性について網羅できる」、原田担当課長は「道路陥没や詰まりなどの苦情は減ってきている。主として人件費の削減であるがコスト縮減効果も出ている」と述べた。

 「包括委託を行う中で官側の技術力をいかに担保するか」について、原田担当課長は「市職員をCWOに派遣し実務を担うことによる技術力の継承・向上を検討している」、戸谷担当課長は「委託先の共同企業体と連記し、企業側と行政側が共に技術力を向上するための研修等を行っていきたい」、小泉副参事は「全国初のチャレンジ的な取組みとなったため、受け手である共同企業体と市職員が同じ方向で進むマインドを持ち、若手職員が民側に教わりながら業務を進めることで技術力が向上している」、五枝係長は「南河内4市町村で事務の共同化を行っており、発注業務等を通じたOJTや勉強会などを共同で行うことで、技術継承に取り組んでいる」と述べた。

 末益課長補佐は「管路の維持管理の持続に向けて、下水道管理者は4市の取組みを参考にしてほしい。また民間企業も技術を磨いてほしい」と締めくくった。


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