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大口径スクリーニング主流へ 管清工業・KPROーFtype、機種ラインアップ拡充 マイクリップに追加

2021/04/21 産業 製品・技術

段差管きょ適用も視野

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  • 水面浮上式を採用(基本仕様)
  • 投げ込みを想定した円盤仕様

 管清工業(長谷川健司社長)では、大口径管で顕在化する調査困難箇所等に特化したスクリーニング機器(KPROーFtype)の開発を進めている。開発開始から約5年で5機種を製品化し、現在では段差管きょ等に対応する新たなラインアップに向け開発を進めている。

 φ800以上の大口径管は、24時間を通し流量が多く、流速が速く、水深が深いことから、作業員の潜行や既存調査機器(自走式カメラ等)の使用が難しい、いわゆる調査困難箇所が数多く存在する。このため、老朽劣化に関する正確な実態把握が行えていないのが実状だ。

 こうした大口径管は重要幹線に位置付けられているとともに代替路線もないケースも多いため、老朽劣化の進行状況を早期に把握することが求められており、作業員の安全を確保しつつ幹線全体を調査できる技術が求められていた。

 もともと同社では、平成27年に小口径を対象としたスクリーニング対応の簡易型自走式カメラ機器「KPRO」を開発。導入から約6年が経過する中で国内での累計調査延長は1700kmを突破している。

 そのKPROの大口径分野への適用を図るべく、同社では5年前から「KPROーFtype」の開発を進めてきた。作業員による潜行目視が行えない調査困難箇所での点検を簡易・迅速・安全に実現することがコンセプト。全5機種のラインアップを展開している。設計思想は船体型とし、動力部を廃した水面浮上式を採用。最低水深10cmほどあれば水流で管内を流下できる。

 機器本体に市販の小型高解像度カメラ(アクションカム)と防水ライトを備えた構成で、外部電源などは不要。取り付けた命綱ロープで速度調整を行いつつ管内状況の撮影を行う。船首には、シーアンカーを取り付けており、これが船体を安定させる役目を果たす。複数スパンを連続した調査も可能。

 映像は、調査終了後に下流側で機器本体を回収し、パソコンで確認する。

 初期に開発した標準型基本仕様(φ800~2500)をベースに、土砂堆積物や狭小管路向けの小型仕様、φ4000までの超大口径管までカバーする拡張型仕様、さらに機器本体の複数箇所にカメラを取り付けより精度の高い映像収集を可能とした延伸型仕様などを取りそろえる。

 昼夜問わず管頂近くまで水深のある調査困難箇所でも映像収集が行える薄型仕様については、管頂部と水面差が20cm未満かつ、乱流が激しい河床下横断管での調査実績がある。

 直近では滝落とし箇所や段差管きょ、背割管など、その構造上、従来の開発機器では調査が困難なケースを想定し、円盤型の開発も進めている。船体は浮き輪状とし、表裏両面に360度カメラを1基ずつ取り付けた仕様となっている。

 マンホールから投げ込んだ際の衝撃にも耐え、万が一転覆した際も映像収集が行えることを開発目標としており、現在は強度検証に取り組んでいるとのこと。今年の下水道展で実機を披露したい考えだ。

 こうした大口径スクリーニングについては、個別の業務受託はもとより、管路包括を受託した際、ストックマネジメント基本方針を策定するための情報収集・整理の一環で行われる現状把握のための調査業務での活用を想定している。

 従来は調査の方法がなく机上での検討となっていた調査困難箇所(大口径管)のリスクを把握することが可能となることで、より実効性の高いストマネ計画の策定へとつながる。

 同社では、管路管理の無人化をテーマに技術開発を加速している。飯島達昭取締役技術部長は「大口径管は現状では潜行目視が基本だが、ゲリラ豪雨による増水、管内での硫化水素の滞留などさまざまな危険をはらんでいる。ようやく機械式調査も普及してきたが道半ば。技術開発と両輪で浸透を進めていきたい」と述べる。


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